「鞭打ち症」の患者さんを診察して感じることは、皆さんの「鞭打ち症」に対する理解が少ないため、ばかにしいる人、必要以上に心配している、不安に思っている人が多いということです
これから述べることが、診察する時の私の説明不足をカバーし、必要以上の心配をとり除き、又正しく治療を受け、少しでも早くよくなるのに役立てていただきたいと思います。
いわゆる鞭打ち症とは、追突事故などの時に、が丁度の鞭のような運動をして起る障害をいいます。此の時、骨折したり脱臼したり、神経がされたりすると「鞭打ち症」とはいいません。従って、の筋肉、 、関節包、 、、など、いわゆる軟部組織の損傷で、整形外科医の間では、一般に「頸椎捻挫」と呼んでいます。
障害される軟部組織は先に述べましたように色々ありますので、症状も障害されたかによって、@直接症状、A神経根症状、B血行障害症状、C自律神経症状、D神経変化による症状など、たくさんの種類があります。その中で最も一般的なものを次にあげてみます。
@頸部の痛み、後頭部の痛み、頸が動かしにくいなど
A肩、腕、手指の神経痛のような痛みやシビレ感など
B目まい、耳鳴り、目がかすむ、嘔吐など。
Cいらいらする。頭がボンヤリするなど。
以上が主なものですが、その他、腰が痛くなったりすることもあります。
尚、症状が強い場合とか、症状がなかなかとれない場合には、MRIとかCT検査が必要なこともあります。
最初は症状がなくても、数時間から、遅い人で翌日頃から症状が現われて、2〜3日目頃がひどくなる場合がよくあります。従って、たいしたことはないと思われる場合でも、次のようなことがあれば、すぐにご連絡下さい。
@頭やくびの痛みがだんだん強くなってくる。
A手足のシビレや脱力感がでてきた。
Bあちこちの痛みがだんだん強くなってきた。
C熱がでてきた。
D悪心、 がたびたびある。
E目がかすんできた。
Fその他の症状がだんだん強くなってきた。
受傷した時は、一般にX線検査等を行いますが、何も異常がなくても、受傷後1〜2日は充分に安静をとり、次の注意をよく守りましょう。受傷後、2〜3日の安静が、後から症状がでた場合でも、その治り方に大きな影響を及ぼすものです。
@ 自動車の運転はしないようにしましょう。
A アルコール類はのまないようにしましょう。
B 早く寝て充分な安静を取りましょう。
C 長風呂するのは、よくありません。
鞭打ち症は、どれくらい治療すれば治るのか、将来共に治らない症状(いわゆる後遺症)が残るのかどうか、ということを受傷直後に判断するすることは、殆んどの場合非常に困難です。
然しながら初めから正しい受傷初期の安静を守っていれば、色々な検査で異常がないのに3ヶ月も、6ヶ月以上も治らない場合も少なく、まして永久に治らない(後遺症)障害が残るのは、宝くじにあたるのよりもめづらしい位です。6ヶ月以上も色々な症状が続く場合は、「外傷性神経症」や「後遺症恐怖症」?等の場合がよくあります。
結局は、初期に軽いと「ばか」にせず、医師の指示に従って正しく治療を受け、初期の安静をとることは、いわゆる後遺症の予防策には何よりも大切なことです。
交通災害が多い社会情勢下で生活する私達は、何時災害がふりかかってくるか判りません。充分に注意しましょう又、不幸にして「鞭打ち症」になった場合は、一日も早く社会復帰出来るよう初期の安静、初期の正しい治療を受けるよう努力しましょう。最後に重ねて申しますが、最初の2〜3日の安静は、何よりも大切なことです。
(2005.06)
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